今日の一曲No.32:ボロディン「交響曲第2番(アンセルメとスイス・ロマンド・オーケストラ)」

「今日の一曲」の第32回目は、ボロディン作曲「交響曲第2番」。この曲を収めたLPレコード盤を中心にあれこれと語らせていただく。

 

ご紹介の盤は、エルネスト・アンセルメ指揮、スイス・ロマンド・オーケストラの演奏で、1954年12月の録音のものを1982年に当時の新しい音響技術で復刻・再販したアナログLPレコード盤だ(上の写真)。

 

小学校の5年生か6年生頃だったと記憶するのだが、テレビのクラシック音楽番組で、ボロディン作曲、歌劇「イーゴリ公」第2幕「ダッタン人の踊り」を紹介していたのを視た。

最近もCMなどに用いらて広く多くの人に知られているこの曲の旋律を、このとき初めて知った。

ロシアでも中央アジア周辺寄りの風景が浮かんでくるような民俗的でありながら、美しく幻想的で穏やかなる旋律(メロディ)を。

 

小学生のガキが当時そこまで様々深く感じていたかは定かではないが(笑)、印象に残る美しい旋律と一緒に、ボロディンという作曲者の名前を覚えたことは確かだ。

 

で、この旋律は歌劇のストーリーに合わせて創り出されたわけだが、ボロディンという作曲家が創り出す美しい旋律は、ただそれだけではないと知ったのが、今日、ご紹介の「交響曲第2番」だ。

 

が、冒頭で説明した通り、この盤が出版されたのが82年ということだとすると、実際に手にしたのはこれよりも何年か後のはずだ。大学生活を終える間際だったと記憶する。

卒業研究の論文もほぼまとめ上げて、ほっとしていた頃のこと。この「今日の一曲」で以前から何度か登場している習志野市内のレコード店にふらっと立ち寄って、狙いもないまま、例のコツで、LPレコード盤を素早くめくり上げながらジャケットをチェック。

ふと、「ボロディンかぁ〜」と手を停めたのがこの盤だった。

これより数年前から何かの切っ掛けで少し興味をもっていた「スイス・ロマンド・オーケストラ」だというのも合わさって、迷いなく購入。

 

このLPレコード盤で、初めてボロディンの交響曲を聴いた。

楽曲の各所に、ロシア・中央アジアをイメージさせるような民俗的で美しい旋律が散りばめられていた。時に、浮かれ過ぎないような重々しい響きや、これと対称的に、変拍子の民族舞踊的な軽快なリズムを感じさせる部分もあったり。

それでも、楽曲全体的には、やはり、美しい旋律と優しさある響きのオーケストレーションが印象的な曲だ。

アンセルメの指揮とスイス・ロマンド・オーケストラの堅実で素朴さを感じる演奏も手伝ってのことかと。

 広く多くの人にも知られている「ダッタン人の踊り」の中でのあの美しい幻想的な旋律から決して裏切ることのないボロディンならではの旋律が堪能できる交響曲だった。

あくまでも私的な感想だけど・・・。

 

ジャケット裏に書いてある解説を読むと、この曲は、初演当時は不評で、後々になって、「この曲は、まったく新しい」と称賛されるのだが、時遅く、ボロディンが亡くなってからのことだったとある。

 

音楽家や作曲家の多くは現状維持ではなく革新的に新しい音を模索しながら作品にするものだから、音楽史上でも、現代でもまた、多々、こうした状況が起こることも致し方ないとは思う半面、やっぱり寂しいねぇ・・・。

創作した本人は作りたいものを創り出して世に送り出したのだから、妙に感傷的になることもないのかも知れないけれど・・・???。

現在は自身も創って演奏する側だからそうは思うのだが、聴く側の時もあるわけで、こうなると、聴くという行為も「可能な限り澄んだ想い」を努めて聴けるようでありたい・・・と思ってしまう。

 

さて、借りていたアパートの部屋も「そろそろ片付けるようだなぁ〜」などと思いながら聴いていたような・・・そんな当時の記憶もよみがえってきた。

 

民俗文化を背景に美しく幻想的な旋律で、非日常的な景色と内面の豊かさと澄み渡らせるような心情を届けてくれた「今日の一曲」、ボロディン作曲、「交響曲第2番」を紹介させていただいた。